モーセの第6-7の書

 
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 旧約聖書の預言者モーセは、有名な紅海を割った奇跡をはじめ、様々な奇跡を行っていた事でも名高い。
 またこのヘブライの「立法者」は、シナイ山で神の10戒を受け取り、イエス以前では(ユダヤ人には以後も)最も権威のある聖人あった。そのため、その奇跡の「秘密」を得たいという魔術師らの欲求の対象にもされ、結果として、モーセもソロモン王と同様に、後の時代のグリモアの著者とされる羽目となってしまった。
 モーセはトーラー(旧約聖書の最初にある創世記、出エジプト記、レビ記、申命記、民数記)の5冊の著者と伝統的に考えられてきたが、「実は第6、第7の書も密かに書いており (*1)、そこにはモーセが用いた魔術の奥義が書かれていた」という「設定」が、本グリモア「The Sixth and Seventh Books of Moses」である。
 実際に書かれたのは18世紀頃にドイツでパンフレットとして現れ、古物収集家のヨハン シャイベル(1736年 - 1809年)が編集し、シュツットガルトで1849年に出版された。英訳は1880年。
 本書は1338年、1383年、1501年の文書が含まれると主張し、さらにクタン・サマリア語から訳されたと称するが、この言語は12世紀に絶滅している。

 このグリモアは歴史の意外なところにも影響を与えている。19世紀中、ドイツ移民とともに新大陸にも本書は多数渡っており、ペンシルベニア州のドイツ移民の民俗魔術パウワウや、アメリカ南部のニューオーリンズの民俗魔術フードゥーにも影響し、さらにハイチ島の魔術宗教ブードゥー教の形成にもその影響が認められると研究者らはいう。

 内容としては、第6と第7はもとは1冊だったのが分離されており、第6の方には天使の9位階が7つの印章に分けられており、第7の方では、12の図や、その他にも様々な印章が追加されている。その印章はヘブライ文字や未知の文字によるもので、神秘的な雰囲気がある。
 本訳では、原本の図は判別しがたいので、Perterson版のものを使った。





 

  • 最終更新:2020-05-12 17:15:32

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