ロザリオ入門

 
rosary_mary.jpg

ロザリオ入門

Hiro著


 この記事では、カトリック教会(と一部のプロテスタント教会)の伝統的なマリア崇敬の信心行であるロザリオの祈りを紹介しよう。
 ロザリオはラテン語のrosarium、「薔薇の冠」から来た言葉であり、12世紀ごろに中世ヨーロッパで広まったものである。伝説では、ドミニコ会の創設者である聖ドミニコ(1170年 - 1221年)がアルビ派の異端が流行っている事に嘆き祈っていた時に、聖母マリアが現れて、「異端に対する武器」として、ロザリオを授けられたと言われている。
 日本では、よくペンダントと間違われて首にかけたりするものと思われる事もあるが、実際には手で持って、仏教の数珠のように、祈りを唱えながら指で珠を動かして、カウンティングするための道具である。
 実際、研究者の中には、仏教の数珠がヨーロッパに伝わってロザリオになったという主張もあるが、これは今ではあまり信じられていない説となっている。途中の東方正教のビザンチン帝国、イスラーム圏に似たような祈りの道具がまるで無いからで、今では西欧での自然発生説が主流となっている。
 歴代教皇もロザリオの祈りを推奨しており、特に大教皇として知られるヨハネ・パウロ2世は、3つの神秘(後述)に対して、新たな第4の神秘を加えるほど愛好していた。

ロザリオの祈り

Rosary.jpg

 ロザリオの祈りは以下の手順で一般に行われている。

(1)十字架の部分を左手の指で持ちながら、もう片方の手で十字架のしるしを行い、使徒信条を1回唱える。
(2)その上の珠を持ち、主の祈りを唱える。
(3)その上の3つの珠を繰りながら、アヴェ・マリアの祈りを3回唱える。
(4)その上の珠を持ち、栄唱を唱える。

(5)その上のメダイとなった部分を持ち、第一の黙想(後述)をしてから、主の祈りを唱える。
(6)次の10の珠を指で繰りながら、アヴェ・マリアの祈りを10回唱える。
(7)次の少し大きな珠を持ち、栄唱を唱える。
 さらに加えて、ファティマの祈りを唱える事もある(ヨハネ・パウロ2世は推奨していた)。

(8)それから、第二の黙想、主の祈り、アヴェ・マリアの祈り10回、と続けていく。
(9)最後の第五の黙想を終えたら、一巡となる。続ける場合、メダイの部分に再び指を触れて、第一の黙想に戻って、次の周回をする事もあるが、ここで終わらせる場合、元后あわれみの母(Salve Regina)を唱えてから、十字架のしるしをして終わらせる。

3つ(あるいは4つ)の神秘

 ロザリオの祈りには、ヨハネ・パウロ2世以前の3つの神秘(黙想時の祈りのテーマ)のあった旧式と、この教皇が第4の神秘を加えた新式の2種類がある。教皇自身が、この新式は任意であると述べており、保守的な信者の中には新式を認めずに旧式のみを行う人もいる。
 旧式では、マリアの受胎告知、イエス誕生から幼年時代の出来事をテーマとした喜びの神秘、十字架での死をテーマとした苦しみの神秘、復活とマリアの被昇天をテーマとした栄えの神秘がある。
 そして新式ではそれらに加えて、イエスの公生活(布教活動)をテーマとした光の神秘がある。

 行う日も決められていて、旧式の場合、月曜日と木曜日は喜びの神秘、火曜日と金曜日は苦しみの神秘、水曜日と土曜日は栄えの神秘となり、日曜日は待降節(11月)から四旬節(3月)は喜びの神秘、四旬節から復活祭(4月)までは苦しみの神秘、復活祭から待降節までは栄えの神秘と、1年の時期によって3つのいずれかを行うものだった。

 新式の場合、木曜日に光の神秘を押し込んだので、そのため月曜日・土曜日は喜びの神秘、火曜日・金曜日は苦しみの神秘、水曜日・日曜日は栄えの神秘となっている。新式の方は、金曜日の苦しみ(イエスの死)と日曜日の栄え(復活)の間の、土曜日が喜びとなっていたり、やや順番が混乱している感があるのは否めない。

 またロザリオは詩篇150篇を唱えるのと同じ利益があるとも言われていた。中世の修道院では毎週詩篇を一巡で唱える習慣があり、これには霊的にも物理的にも大きな利益があるとされ、民衆も行うのを望んだが、彼らはラテン語で書かれた詩篇を読む事が出来ずにいた。そのため教会は、3つの神秘のそれぞれでアヴェ・マリアの祈りを50回行う、合計150回の祈りも同じ効果があるとした。この150の数にはそのような象徴的な意味合いが込められていたが、新式ではこの意味合いは無くなっている。

 それぞれの神秘に応じて、5つの黙想をするテーマも決まっている。これらの出来事を心にしばらく黙想する。

・喜びの神秘
(1)マリア、神のお告げを受ける
(2)マリア、エリザベトを訪問する
(3)マリア、イエスを生む
(4)マリア、イエスを神殿にささげる
(5)マリア、イエスを見いだす

・光の神秘
(1)イエス、ヨルダン川で洗礼を受ける
(2)イエス、カナの婚礼で最初のしるしを行う
(3)イエス、神の国の到来を告げ、人々を回心に招く
(4)イエス、タボル山で栄光の姿を現す
(5)イエス、最後の晩餐で聖体の秘跡を制定する

・苦しみの神秘
(1)イエス、苦しみもだえる
(2)イエス、むち打たれる
(3)イエス、いばらの冠をかぶせられる
(4)イエス、十字架を担う
(5)イエス、息をひきとる

・栄えの神秘
(1)イエス、復活する
(2)イエス、天に上げられる
(3)聖霊、使徒たちにくだる
(4)マリア、天の栄光に上げられる
(5)マリア、すべての人の母となる

祈りの内容

 ロザリオでの祈りは昔はラテン語で全て唱えられていたが、今では現地の言語を使うようになっている。 

十字架のしるし(Signum Crucis)

 In nomine Patris et Filii et Spiritus Sancti. Amen.

 父と(右手の指を額に触れる)子と(胸に触れる)、聖霊の御名によって(左肩に触れ、右へと動かし、右肩に触れる)アーメン。

使徒信条(Symbolum Apostolicum)

 Credo in Deum, Patrem omnipotentem, creatorem caeli et terrae.
 Et in Iesum Christum, Filium eius unicum, Dominum nostrum,
 qui conceptus est de Spiritu Sancto, natus ex Maria Virgine,
 passus sub Pontio Pilato, crucifixus, mortuus et sepultus.
 Descendit ad inferos, tertia die resurrexit a mortuis.
 Ascendit ad caelos, sedet ad dextram Dei Patris omnipotentis.
 Inde venturus est iudicare vivos et mortuos.
 Credo in Spiritum Sanctum, sanctam Ecclesiam catholicam,
 sanctorum communionem, remissionem peccatorum,
 carnis resurrectionem, vitam aeternam. Amen.

 天地の創造主、全能の父である神を信じます。
 父のひとり子、わたしたちたの主
 イエス・キリストを信じます。
 主は聖霊によってやどり、おとめマリアから生まれ、
 ポンティオ・ピラトのもとで苦しみを受け、
 十字架につけられて死に、葬られ、陰府(よみ)に下り、
 三日目に死者のうちから復活し、天に昇って、
 全能の父である神の右の座に着き、
 生者と死者を裁くために来られます。
 聖霊を信じ、聖なる普遍の教会、聖徒の交わり、
 罪のゆるし、からだの復活、永遠のいのちを信じます。
 アーメン。

主の祈り(Dominica oratio)

 Pater noster, qui es in caelis.
 Sanctificetur nomen tuum.
 Adveniat regnum tuum.
 Fiat voluntas tua, sicut in caelo, et in terra.
 Panem nostrum quotidianum da nobis hodie.
 Et dimitte nobis debita nostra,
 sicut et dimittimus debitoribus nostris.
 Et ne nos inducas in tentationem,
 sed libera nos a malo. Amen.

 天におられるわたしたちの父よ、
 み名が聖とされるますように。み国が来ますように。
 みこころが天に行われるとおり
 地にも行われますように。
 わたしたちの日ごとの糧を今日もお与えください。
 わたしたちの罪をおゆるしください。
 わたしたちも人をゆるします。
 わたしたちを誘惑におちいらせず、
 悪からお救いください。
 アーメン。

アヴェ・マリアの祈り(Ave Maria)

 Ave Maria, gratia plena: Dominus tecum,
 benedicta tu in mulieribus,
 et benedictus fructus ventris tui, Iesus.
 Sancta Maria, Mater Dei, ora pro nobis peccatoribus,
 nunc et in hora mortis nostrae. Amen.

 アヴェ・マリア、恵みに満ちた方、
 主はあなたとともにおられます。
 あなたは女のうちで祝福され、
 ご胎内の御子(おんこ)イエスも祝福されています。
 神の母(はは)聖マリア、わたしたち罪びとのために、
 今も、死を迎える時も、お祈りください。
 アーメン。

栄唱(Gloria Patri)

 Gloria Patri, et Filio, et Spiritui Sancto.
 Sicut erat in principio, et nunc, et semper,
 et in saecula saeculorum. Amen.

 栄光は父と子と聖霊に。
 初めのように今もいつも世々に。
 アーメン。

ファティマの祈り(Oratio Fatima)

 Domine Iesu, dimitte nobis debita nostra,
 salva nos ab igne inferiori,
 perduc in caelum omnes animas,
 praesertim eas quae misericordiae tuae maximae indigent.Amen.

 主イエス・キリスト、
 わたしたちの罪をゆるしてください。
 わたしたちを滅びから救い、
 すべての人々、
 ことにおんあわれみをもっとも必要としている人々を
 天国に導いてください。
 アーメン。

元后あわれみの母(Salve Regina)

 Salve, Regina, mater misericordiae. vita, dulcedo et spes nostra, salve.
 Ad te clamamus exsules filii Hevae.
 Ad te suspiramus gementes et flentes in hac lacrimarum valle.
 Eia ergo, advocata nostra, illos tuos misericordes oculos ad nos converte.
 Et Iesum, benedictum fructum ventris tui, nobis post hoc exsilium ostende.
 O clemens, o pia, o dulcis Virgo Maria.

 元后、あわれみの母、われらのいのち、喜び、希望。
 旅路からあなたに叫ぶエバの子、
 なげきながら、泣きながらも、涙の谷にあなたを慕う。
 われらのためにとりなすかた、
 あわれみの目をわれらに注ぎ、
 尊いあなたの子イエスを、旅路の果てに示してください。
 おお、いつくしみ、恵みあふれる、喜びのおとめマリア。

ロザリオの利益

 聖母マリア自身が聖ドミニコに、ロザリオを唱えたら以下の15の利益があると約束していた。

 1. ロザリオを信心を込めて唱えるならば、恵みの徴を受け取るでしょう。
 2. ロザリオを唱える全ての人に、我が特別な保護と最大限の恵みを約束します。
 3. ロザリオは地獄に対しての強力な鎧となり、悪を滅ぼし、罪を減らし、異端者を破るでしょう。
 4. ロザリオは、徳と善行が栄えるようにします。また、魂は神の豊富な憐みを受け取るでしょう。人の心から、この〈世俗の〉世界とその虚栄への愛を退かせ、永遠のものへの望みへと高めるでしょう。それらの魂は、この手段によって聖なるものとするでしょう。
 5. ロザリオを唱える事で、私に自らを勧める魂は、滅びる事は無いでしょう。
 6. ロザリオを熱心に唱え、それらの聖なる神秘を黙想するならば、不幸によって征服されたり、圧倒される事はありません。神はその正義によって罰する事はなく、〈天国へ行くのに〉準備されていない死によって滅びる事はありません。罪びとは改悛し、義人は恵みの中で育ち、永遠の命の価値ある者となるでしょう。
 7. ロザリオを真に献身的に行う人は、教会の終油の秘蹟〈天国行きを確定させる〉を受ける前に死ぬことはありません。
 8. ロザリオを唱えるのに忠実な人は、その生涯においても死においても、神の光とその豊富な恵みを持つでしょう。死んでからも、楽園の聖人たちと喜びを共にするでしょう。
 9. ロザリオに捧げてきた人を、私は煉獄から救うでしょう。
 10. ロザリオに信仰深い子供は、天で高い栄光の利益があるでしょう。
 11. ロザリオを唱える事で、あなたは私に望む全てのものを得るでしょう。
 12. 聖なるロザリオを広める全ての人は、その必要な時に私の助けがあるでしょう。
 13. ロザリオを勧める全ての人は、その生涯でも死の時にでも、天の宮廷全体からのとりなしがある権利を、私は我が神の子〈イエス〉から得ています。
 14. ロザリオを唱える全ての人は、我が子供たちであり、我が唯一の息子イエス キリストの兄弟です。
 15. 我がロザリオに捧げる事は、運命の大きな徴です。

 

  • 最終更新:2021-05-31 12:29:55

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード