神学大全

 
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 聖トマス アクィナス(1225年頃 - 1274年)は、本書でスコラ神学を総合、体系化させた、シチリア出身のドミニコ会士、神学者、聖人である。そしてカトリックの33人の教会博士の1人で、「天使博士(Doctor Angelicus)」と呼ばれていた。またトマスは「キリスト教徒のアリストテレス」と呼ばれるほど博識な人物であった。実際、トマス神学へのアリストテレスの影響は強く、本書でも多数の引用がある。その師の聖アルベルトゥス マグヌス(普遍博士)は錬金術師としても当時有名であり、トマスもこの術を学んでいたといわれる。またアルベルトゥスが「自動機械(オートマタ)」なる話すこともできる、からくり人形を開発したが、トマスはそれが悪魔的だとして破壊したという逸話もある。

 本書「神学大全(Summa Theologiae)」はトマスの主著で、それまで個々の神学者がそれぞれ主張していて、煩雑だった神学を体系化してまとめたものである。神について(119問)、人間について(303問)、キリストについて(90問)の三部で構成され(第二部はさらに二つに分けられている)、それぞれで様々な問いが含まれ、読者が全般的にキリスト教神学を学べるようにしている。
 また、この問いもさらに幾つかに分けられていて、それらの問いは、まず世間で伝えられている異論(否定論)が幾つか述べられ、それからその対論が述べられてから、トマス自身の解答があり、その後に個々の異論への反論がある形式となっている。ここで面白いのは、トマスの解答では異論を頭ごなしに否定したりはせず、その中の真理と思える部分は受け入れつつ、その総合をしようと試みている事にある。このような著者の知的誠実さは本書を古典とした一因であろう。
 トマスは1265年ごろから本書の著述に入っていたが、1273年12月6日、ミサを捧げていた最中に神との直接的な接神・神秘体験をして、知識は信仰に対しては無であると悟り、第三部の途中で著述を止めてしまう。残りの部分は、1274年のトマスの死後に、弟子たちがその構想を基にまとめたものである。


第1部 神について

神学大全 1-1 問1 この聖なる教えの性質と範囲について
神学大全 1-2 問2 神の存在について
神学大全 1-3 問3 神のシンプル性について

 

  • 最終更新:2022-02-02 13:32:04

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